男性の更年期障害とは
更年期障害というと、閉経前後にホルモン分泌の変化を原因として生じる女性の不調を思い浮かべる方が多いと思います。実は男性も、ホルモン分泌の変化を同時期に生じ、様々な症状を起こすことがわかってきています。
のぼせや急な発汗といったホットフラッシュ、身体の痛み、皮膚の乾燥、やる気が起きない、集中力が持たないなどのお悩みがあって、受診しても特に異常がないとされる場合、男性更年期障害(LOH症候群)の可能性があります。しかし、適切な検査や診断を受け、状態に合わせた治療を行うことでこうした症状が改善できるケースがあります。当院では、男性の方に向けた男性更年期障害(LOH症候群)の診断と治療を行っています。こうしたお悩みがありましたら年のせいとあきらめてしまわずに、お気軽にご相談ください。
男性更年期障害の原因
人間は様々なホルモンの働きによって身体の機能をコントロールしており、性ホルモンも生殖器だけでなく多くの臓器に影響を及ぼします。男性ホルモンであるテストステロンも男性の身体にとって多くの重要な役割を果たしていますが、血液中のテストステロンレベルは年齢とともに低下していき、ホルモンバランスが変化します。
男性更年期障害は、テストステロンの減少をはじめとしたホルモンバランスの変化によって生じる様々な症状を指します。男性の更年期は、40歳以上であればいつでも起こりうるとされています。
女性は女性ホルモンであるエストロゲン減少に関して閉経というわかりやすい目印があるので更年期障害も発見されやすいのですが、男性の場合はテストステロンの減少が徐々に起こるため診断のつきにくい傾向があります。また、ホルモン分泌は加齢だけでなく、環境変化などのストレスによって大きく変化することもあります。
こうしたことから、男性更年期障害の診断にはテストステロンの数値だけでなく、症状などもしっかり確認した上で総合的な判断が重要になってきます。
男性ホルモンの働き
男性ホルモンは主に精巣から分泌され、性機能以外にも多くの組織や臓器に作用して男性の健康維持に役立っています。女性に比べて男性に筋肉がつきやすい傾向があるのも男性ホルモンの影響です。また男性型脱毛にも男性ホルモンが関与しています。
男性ホルモン分泌低下によって、生殖器、脳、皮膚、骨、骨髄、筋肉、腎臓、肝臓などが多くの影響を受け、それによって様々な症状を起こします。また男性ホルモンは男性を様々な病気から守る働きも持っているため、男性ホルモンの分泌が低下することによって多くの病気の発症リスクも上昇します。こうしたことから、男性も更年期になったら健康管理にそれまでよりも注意深く取り組むことが重要です。
男性更年期障害の診断
男性ホルモンであるテストステロンの血中濃度を調べることで診断できます。ただし、数値は絶対ではなく、数値が正常範囲でも重い症状を起こすことがあり、逆に数値が低くても特に問題がないケースも存在します。そのため、診断には、症状の内容なども含めた総合的な判断が重要になってきます。
テストステロン値
血液を採取してテストステロンの値を調べます。国際的な基準では、血中のテストステロン値が300ng/ml以下を男性更年期障害と診断していますが、日本では遊離テストステロン(テストステロンのサブタイプ)8.5pg/ml以下を男性更年期障害と診断しています。
なお、実際の診断では数値に加え、症状の内容なども考慮されます。
男性更年期障害の治療
男性ホルモン補充療法
男性ホルモンは20歳代をピークに緩やかに分泌の低下がはじまります。男性更年期障害は男性ホルモンの低下によって症状を起こしているため、不足している男性ホルモンを補充する治療を行います。効果の出方や程度には個人差がありますが、投与してすぐに目覚ましい効果を実感できるケースもあります。
エナルモン(250mg)の筋肉注射、あるいは軟膏を顎下か陰嚢に塗布する治療を行います。エナルモンの注射は3週間に1度、受ける必要があります。
補充療法で起こる可能性がある合併症
男性ホルモンの補充療法を受けることによって、ホルモンが肝臓で代謝されることで起こる肝機能障害、赤血球の増加による多血症を起こす可能性があります。そのため、投与前と投与後に血液検査を行い、慎重に経過を観察する必要があります。
また、男性ホルモン補充療法と前立腺がんには関連がないという研究報告もありますが、前立腺がんは男性ホルモンが関与するとされていますので、投与前に前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSA検査を必ず行います。前立腺がんがある場合でもコントロールがしっかりできている場合には、男性ホルモン補充療法が可能なケースもあります。当院では、PSA検査を行った場合、検査当日に結果をお伝えできる環境を整えております。通院回数の削減など患者様の負担軽減に努めています。お気軽にご相談ください。
漢方薬
症状があっても男性ホルモンの数値が正常範囲の場合は男性ホルモン補充療法の適応になりません。また、合併症の多血症や肝機能障害、PSA高値、睡眠時無呼吸症候群などがある場合、男性ホルモン補充療法を行えません。そうした際には、更年期障害の症状を和らげる効果を期待できる漢方薬が有効な場合もあります。女性の更年期障害で使われている漢方薬によって症状が改善するケースもあります。当院では、患者様の体質や症状に合わせた漢方薬の処方も行っています。
なお、前立腺がんの治療で行うホルモン療法では、男性ホルモンの分泌がゼロに近くなることがあり、その場合にも更年期障害と同様の症状を起こすことがあります。漢方薬はそうした際に処方されることもあります。
生活習慣の見直し
肥満や生活習慣病と男性更年期障害の関連が指摘されており、健康的な生活は男性更年期障害の症状改善につながると考えられています。
- 睡眠や休息を十分にとる
- 肥満している場合は適正体重まで減らし、それを維持する
- バランスのとれた食生活
- 禁煙
- ストレスの上手な発散
- 軽い運動を習慣付ける
など
上記のような健康的な生活を心がけることで、男性更年期障害の症状を軽減させ、生活習慣病や動脈硬化などのリスクも低減させましょう。