性感染症とは
性行為の際に粘膜や皮膚の接触で感染する病気の総称で、オーラルセックスなどでも感染します。男女で症状が異なる疾患も多く、男女どちらかだけ症状を起こし、パートナーは感染しても無症状の場合があります。こうしたことから、再感染を繰り返してしまうケースも珍しくありません。
性感染症は放置することで男女ともに不妊の原因になることがあり、赤ちゃんに感染させてしまうこともあります。進行すると臓器や脳などに深刻な影響を及ぼす梅毒も近年、感染者数が増加傾向にあります。
性感染症の多くは早期に適切な治療を受けることで短期間に完治させることが可能です。疑わしい場合は受診してしっかり治療を受けることが重要です。また、感染がわかったらパートナーにも必ず受診するよう伝えてください。なお、女性の場合、婦人科の受診が必要になります。
こんな症状はありませんか
性感染症はそれぞれ異なる症状を起こし、男女で異なる症状を起こすことも多くなっています。下記では男女共通で起こりやすい性感染症の典型的な症状を紹介しています。こうした症状に気付いたらお早めに当院までご相談ください。
- 外陰部のかゆみ・痛み・できもの・しこりがある
- 膿やおりものなどがある
- 排尿の際にかゆみや違和感がある
※性感染症の検査や治療は健康保険適用されます。
主な性感染症
尿道炎
尿道に炎症が起こって排尿時に痛みを生じ、尿道の先から膿が出ることもあります。性行為で感染する性感染症がほとんどを占め、特に多いのがクラミジア感染症や淋病によるもので、オーラルセックスで感染するケースもよくあります。
男性の場合、クラミジア感染症は潜伏期間が2~3週間で比較的症状が軽く、淋病は数日~1週間程度の潜伏期間の後で強い排尿痛や膿を生じます。クラミジア感染症と淋病の同時感染を起こすこともあります。抗菌薬による治療で治すことができますが、最近は薬剤耐性菌が増えているため注意が必要です。なお、感染がわかったらパートナーにも必ず受診するよう伝えてください。
クラミジア感染症
性感染症で最も多く、10代など若い女性の間で増加傾向にあることが指摘されています。クラミジア・トラコマティスという細菌によって起こり、喉にも感染するためオーラルセックスを介した感染も増加しています。
女性は感染しても自覚症状に乏しく、感染に気付かないケースも多く、将来の不妊につながらないか懸念されています。特別な病気ではなく、誰もがかかっている可能性のある感染症になっており、早期の治療が重要です。なお、男性の場合は、尿検査で感染の有無を確認できますが、女性は婦人科を受診して検査する必要があります。
クラミジア感染症の検査
男性の場合は尿検査で調べることができます。女性は婦人科を受診しておりものなどの分泌物を綿棒で採取し、検査します。なお、喉に感染している疑いがある場合には、うがい液でクラミジア感染症の有無を調べることができます。
淋病
淋病の感染によって起こる病気であり、1回の性交渉で感染する確率が20~50%もあり、感染力の高さが大きな特徴になっています。男性に比べて女性の症状はかなり軽く、繰り返し感染するケースも珍しくありません。
淋病に感染すると男性は淋病性尿道炎になって強い排尿痛や膿などに症状を起こします。女性は子宮頸管炎を発症することが多く、自覚症状に乏しいことがほとんどを占めます。なお、最近では男性でも症状が軽いケースも報告されています。クラミジア感染症と同様に淋病も喉へ感染することがあり、オーラルセックスを介して感染することがあります。
淋病の検査
クラミジア感染症と同様に、男性の場合は尿検査で調べることができます。女性は婦人科を受診しておりものなどの分泌物を綿棒で採取し、検査します。喉の感染が疑われる場合も、同様にうがい液を検査します。
梅毒
最近、梅毒の患者数が増えてきています。梅毒は進行すると全身に腫瘍が広がって、脳や神経が冒され、死に至る性感染症ですが、ペニシリン系の抗生物質で完治が可能です。梅毒は梅毒トレポネーマの感染で起こり、1~4期の段階を踏んで進行し、その間に症状のない期間もあるため、治ったと思って放置してしまうと進行して重篤な症状を起こすことになります。疑わしい症状があったらすぐに受診して適切な検査・治療を受けてください。1期には感染部位にアズキ大の硬いしこりができてリンパ節が腫れ、2~3週間で症状が消えます。感染から3か月程度経過すると2期の症状として、赤い発疹や脱毛、膿などの症状を起こし、3年程度で症状がなくなります。3期や4期になるとゴム腫という梅毒特有の腫瘍が皮膚表面や臓器などにできて、脳や神経が冒され、最終的に死に至ります。4週間の抗生物質投与の治療によって治すことができます。
梅毒の検査
血液を採取して、梅毒トレポネーマの抗体の有無を確認します。梅毒は感染から4週間程度経過しないと正確な検査結果を得られないため、感染機会の時期によってはある程度の期間をおいてから再検査を行うこともあります。
性器ヘルペス
単純ヘルペスウイルスの感染によって、性器の周辺に水疱や潰瘍ができます。感染するとウイルスが神経節に潜伏するため、繰り返し発症することがあります。感染しても発症しないままウイルスを排出しているケースも存在し、知らない間に広めてしまっている場合もあります。
女性が最初の感染で発症した場合、激しい痛みや排尿困難などの症状を起こすことがあり、歩行もできないほど強い症状が起こることがあります。ただし、2回目の発症からはそれほど強い症状が起こることはありません。
検査の結果、性器ヘルペスの診断に至った際は抗ウイルス剤による治療が可能です。
性器ヘルペスの検査
ヘルペスは水疱や潰瘍など特徴的な病変を生じますので、視診で容易に判断できます。
尖圭コンジローマ
ヒトパピローマウイルス(HPV)感染によって肛門周辺や外陰部にイボができる感染症です。イボの表面はザラザラした感触で、鶏のトサカやカリフラワーのような形状になることもあります。痛みやかゆみはありませんが、下着などに擦れて出血することがあります。薬物療法は効果が得られない場合もありますので、液体窒素による冷凍凝固などでイボを取り除く治療が必要です。
尖圭コンジローマの検査
特徴的なイボの症状が現れるため、視診で判断できます。一般的には他の検査を行うことはありません。
HIV
精液、膣分泌液、血液、母乳などが原因となり発症する性感染症です。主な感染経路として、性行為による感染、血液を介した感染、母子感染が挙げられます。HIVは発症してもすぐにエイズになるわけではなく、HIVになり数年から数十年の月日を経てエイズになります。急性期には、喉の痛みやだるさ、下痢、発熱、筋肉痛など生じますが、数日程度でこうした症状は消えるとされています。性行為による感染は多くなっており、性行為をする際の正しい予防法を身に着けることが重要となっています。
HIVの検査
血液検査で感染の有無を確認することができます。ただし、感染してから1~2か月は陰性になることがありますので、正しい結果を得るためには感染したと思われるときから3か月程度経過してから検査を行う必要があります。また偽陽性が出る可能性もありますので、最終確認のための検査も必要です。
予防や治療はパートナーと
性感染症の治療で重要なのは、ご自分に加えてパートナーもしっかり守ることです。ご自分の感染がわかった場合は、パートナーにも必ず受診するよう伝えてください。ご自分が感染している場合、パートナーに症状がなくても感染している可能性が高く、パートナーも適切な治療を受けなければ再感染を繰り返してしまうことになります。男性は泌尿器科を、女性は婦人科を受診して、検査・治療を受けましょう。
性感染症は男女ともに不妊原因になることがありますが、女性は特に流産や母子感染のリスクもあります。また、がんのリスクが上昇することもあります。近年には脳などに深刻なダメージを与える梅毒も増加傾向にあります。そして性感染症を放置することでHIV感染リスクも高くなることがわかっています。
デリケートな話題ですので、受診しにくいと感じる場合もあると思いますが、性感染症の放置は深刻な結果をもたらす可能性があります。当院では患者様のプライバシー確保を徹底した上で、お気軽に何でも話していただける環境を整えております。安心してご受診ください。
こんな心当たりがあったら
性感染症も、インフルエンザなどと同様に、「もらわない」「広めない」ことが重要です。不特定多数との性交渉は最も危険な行動です。特定のパートナー以外との性交渉もリスクの高い行為です。性感染症は、皮膚や粘膜の接触でうつるため、一般的な性行為だけでなく、オーラルセックスやアナルセックスでもうつります。
また、睡眠不足や過労、ストレスなどで免疫力が下がっていると感染リスクが上昇します。感染しやすくなる糖尿病などの慢性疾患がある場合には特に注意が必要です。
最初から最後まで正しくコンドームをつけていることである程度予防はできますが、危険な性交渉をしてしまった場合は症状がなくても感染している可能性があります。
大事なパートナーにうつしてしまうリスクを考慮し、「もしかしたら」と思ったらお気軽にご相談ください。